プロジェクトを成功させるために!優れたUX戦略を作るための4つのステップ
プロジェクトを上手く設計し、チームでスケジュール通り進めるためには目標と計画が必要です。プロジェクトリーダーとしてアイデアを形にするために山登りに例えて語っています。優れたUX戦略を作るためにぜひ参考にしてみてください。
テックアカデミーマガジンは受講者数No.1のプログラミングスクール「テックアカデミー」が運営。初心者向けにプロが解説した記事を公開中。現役エンジニアの方はこちらをご覧ください。 ※ アンケートモニター提供元:GMOリサーチ株式会社 調査期間:2021年8月12日~8月16日 調査対象:2020年8月以降にプログラミングスクールを受講した18~80歳の男女1,000名 調査手法:インターネット調査
本稿は、UXPinのブログ記事を了解を得て日本語翻訳し掲載した記事になります。
また本記事は、HP(ヒューレット・パッカード)でストラテジスト、フロントエンドエンジニアなどの経歴を持つDave Malouf氏によって投稿されました。
あなたがデザインチームのリーダーだとしたら、計画なくして目標を達成することは期待できません。
目的を持って目標を設定するときには(山の頂上を目指して登山するように)、目指すべきゴール(山の頂上)を特定して、最良の方法(経路)と計画(戦術)を定めましょう。
全てのUX戦略には、プロジェクトを開始して軌道に乗せるための、堅牢なフレームワーク(枠組み)が必要です。登山に例えて、戦略的フレームワークに必要となる5つの要素を見てみましょう。
1.目的 ―― そもそもなぜこの山に登っているのか?
目標を明確に設定して理解していますか?目標は達成する価値があるものかどうか検証されていますか?誰のための目標ですか?チーム全体がこの目標について理解していますか?
2.目標――目的地を選択する、または少なくとも方向性を定める
例えば、登山においておよそ「北」の方向に向かうというように。
3.経路――山頂にどのように到達するかが重要です
目標への経路設定は組織にとって、利益上の目標を達成するだけではなく、その過程で成長するために重要なものです。
4.途中のポイント――一度立ち止まって、分析と評価を行う機会
経路の途中のポイントは、単なる成果物や活動の場ではありません。これらの各ポイントに到達したら、目標および目標へ至るための経路について、確認と調整を行いましょう。
5. 計画――探検には戦術のための計画が必要です
多くの人は、経路を計画だと思い込んでいます。たしかに、一つ一つの活動は目標に近づく一歩となりますが、戦術は戦略の一部に過ぎません。経路とは、戦術を集めたものではないのです。
目次
ステップ1:目的と目標
目的は、あなたの思い描く結果であるビジョンと結びついたものです。
そして、最初に設定するべきものです。私の場合は、いつも次のようなことから目標設定を始めています。
目的を定義するために、次のような質問を自分自身にしてみましょう。
- 私たちはなぜここにいるのか?
- 私たちはどのような価値を創造できるだろう?
- この価値から、誰が恩恵を受けるだろう?
- なぜ恩恵を受けるといえるのだろう?
目標またはビジョン(思い描く結果や展望)は、目的を明確にします。
- 目的が達成されない場合には、問題点を伝える。
- 問題の解決策を1つ示す。
- 問題の解決策がユーザーにどのような付加価値を提供できるかを示す。
- 解決策を実現するための現実的な手段を提案する。
- 目的をサポートするデータを示す。
目標を真に価値あるものにするためには、感情に訴える現実的なメリットが必要です。これは製品の性能だけで伝えることはできません。
製品の性能は、設計図の中にある要素を示すことしかできません。ユーザーエクスペリエンスを伝えることはできないのです。
以下は、以前私がRackspaceで主導した例です。
目的と目標を定義するために、私は「Managed Cloud(マネージドクラウド)」の意味について掘り下げました。複数の分野のチームを横断的に編成して、2日間これに取り組みました。
まず「Managed(マネージド)の意味とは何だろう?」という問いを考えました。顧客にとっての価値を明らかにするために、言葉を分解してその意味について考えたのです。
この過程で、私は多くの専門用語の罠を突破しなければなりませんでした。
チームのメンバーたちの定義に対して、私は「でもそれは、Managedの本当の意味ではないですよね?適当な言葉を当てはめただけではないですか?」などの問答法で返して、彼らがより理解を深められるように計らいました。
私は次に、チームの各メンバーに、顧客(Rackspaceの従業員)と共有できるストーリーと、新しい価値を反映したシナリオを作成するよう指示して、ストーリーテリングの練習をさせることでチームを導きました。
彼らは、現在どのような問題があり、私たちがその現状をどのように改善できるかについてストーリーを作りました。また、否定的なストーリーと明るい未来を対比させたことで、私たちは目的を考えながら取り組みやすくなりました。
その後、ストーリーを、他の部門と話し合うことができる形でコンピュータに保存しました。音声ナレーション付きの短いフォトエッセイを作成しました。いわば、ビジョンのプロトタイプを作成したのです。
私たちは社内外の利害関係者の前でそのビデオを再生し、良い点と悪い点について、多くのフィードバックを得ました。また、ビデオの内容をユーザー調査に活用したところ、購入数が急増しました。製品デザイン、製品管理、エンジニアリングの全てにおいて、新しく設定した目的と目標に基づいて、未処理の業務の優先順位付けが行われました。
ステップ2:経路をチャート(図表)化する
目的地に到達する経路は、ただ1つとは限りません。経路を選択する前に、考えられる可能性について様々な要因を分析する必要があります。
「目的は手段を正当化する」という考えによって、経路を決めるのは良くありません。
選択肢の比較
もう一度、登山する山を見てみましょう。
赤い色の経路には次のようなメリットがあるとします。
- 安い
- 高速
- 品質が高い
良い選択肢のように思えるかもしれませんが、本当にそうでしょうか?他のいくつかの要因を考慮に入れるとしたらどうなるでしょう。
- 他のプロジェクトから、キープレーヤー(中心人物)を割り当てる必要があります。
- 採算の取れる計画もなしに、技術的債務を生む出すおそれがあります。
- チーム開発について考慮されていません。
- 製品は予定通りにリリースされますが、販売&サポートの取り組みと上手く調整が図られていません。
- 仮説を検証したり、学んだ教訓を適用できるような場面がほとんどありません。
- 成果物や商品の開発を、将来的な偶発債務として扱うことができません。
これでもまだ赤い色の経路は魅力的に思えるでしょうか?他の選択肢(と要因)についても検討してみましょう。
青い色の経路には次のような特徴があります。
- 少し高価です(短期的に)。
- 市場に参入するまでにより長い時間がかかりますが、確かな価値を提供できるという確信は高まります。
- 他の方法よりも品質は向上し、NPS(Net Promoter Score、ネットプロモータースコア)の向上など、顧客ベースの高いKPIを実現できます。
- 赤い色の経路についてすでに箇条書きした問題点について、明確な答えを出すことができます。
青い色の経路が、あなたとあなたの顧客の両方にとって最大の価値をもたらす選択です。
正しい経路の選択
では、正しい経路を見つけるにはどうしたらいいでしょうか?
まず組織の文化、ビジネス、競合、能力などを把握してください。
リソースを対象としたマトリックス分析だけでなく、シンプルなSWOT分析も役立ちます。 XPLANEによって普及しているカルチャー・マップも、非常に有用なツールです。カルチャー・マップでは、組織のカルチャー(文化)を図解で描くことによって、それが結果に与える影響を明らかにします。
選択肢を評価する際には、次の基準について考えてください。
- 技術的およびUXの債務はどのくらいになるでしょうか?現在の状況を考えれば可能ですか?またそれを実行する方法は?
- ある経路を選択した場合、他のプロジェクトの優先順位を下げる必要はあるでしょうか?それは費用に換算してどのくらいになるでしょうか?
- 仮説を定期的に検証するために、どのくらいの時間を割けるでしょうか?
- 利害関係者に意思決定を理解してもらう(あるいは彼ら自身に意思決定してもらう)ために、十分な時間的余裕を確保していますか?
ステップ3:評価ポイントの作成
GPSが登場するよりも前には、私たちが歩き回るときには道順案内(人)に従ったものでした。その人たちの案内能力や、彼らがその地域にどのくらい精通しているかに影響されました。
評価ポイントは、経路上を上手く進んでいるかを確認するためのものです。目標を精緻することはもちろん、成功と失敗について再度評価しましょう。
私たちは、OODAという認知プロセス(Observe:観察、Orient:方向性、Decide:決定、Act:行動)を採用しています。 OODAは、各評価ポイントにおいて次のプロセスを実行します。
- データを収集する
- データを分析する
- 分析を熟考する
- 一連の仮説を統合する
- 仮説の価値を評価する
- 新たな考察に基づいて計画を修正する
アジャイル開発のプロセスにおいては、経路の各部分がエピック(Epic)に相当します。
戦略的な評価ポイント(停止点)は、「スプリント エピック+1(Sprint Epic +1)」に相当します(次の図表より)。
UXのリサーチと発見に「スプリント0(Sprint 0)」を割り当てて、設定したメトリクスに基づいて過去のエピックを振り返ることに「スプリント エピック+1(Sprint Epic +1)」を割り当てます。
このとき、ポストモルテム(Post-mortem)やレトロスペクティブ(Retrospective)などの基本的な振り返り手法だけではなく、アナリスト、設計者、製品チームのメンバー各自が、成功と間違いについて深く掘り下げてそれに応じてパスを調整できるように、スプリントの期間は十分に確保します。
スプリントを過密なスケジュールで進めていると、全体的な視点を持つことが困難になるため、エピック全体についてもレビューを行います。時間的余裕を確保しておくことは、メンバー全員がより広い視点から物事を見るのに役立つので、価値ある投資といえます。
ステップ4:仮説を検証するための計画
経路上の評価ポイントにおける成功は、あなたがどれだけ上手く計画を立てられたかに100%影響を受けます。
最良の計画の立て方は、「これを達成するためには何が必要か?」を逆算的に考えることです。
ポストイットなどの付箋に、スタート地点(始まり)とゴール地点(目標)を別々に書き、辺りにある最も大きな壁に貼り付けます。このメソッドは、「バックプランニング」と呼ばれています。最初に目標から考えて、最初のスタート地点まで、逆算的に考えます。
以下では、企業がチケット管理システムを構築するケースを例として、このメソッドをどのように応用できるかを説明します。
最終的な目標
まず顧客であるITマネージャーが、当社のITオペレータと複数のチャネルにわたって、良いコミュニケーションを図れるよう支援することを目標とします。
新しいシステムにおいては、メッセージングだけでなく、意思決定に対応するワークフロー管理システムも組み込んでおり、エンドユーザーによるカスタマイズも可能になります。
また、NPS(Net Promoter Score、ネットプロモータースコア)の数値を10ポイント上げることも目標です。
現状
現在当社では、電子メールの通知サービスのみ提供しています。またこの通知は、必ずしも顧客チームの中の適切な人物を対象としているわけではありません。
当社のITオペレータは、チケット管理システムで通知を送信します。
- 一部のカスタマイズが可能です。
- デスクトップのブラウザ上でのみ動作します。
- 1人に一括して送信することができます。次に受信者の ITマネージャーは、チームの各メンバーに再送信する必要があります。
大まかな計画
今、私たちは目標と現状を把握できたので、その間のギャップを埋めていきます。
この場合は、逆算的に作業を進めます。まず、エンドポイント(end point:ネットワークに接続された端末)におけるユーザーエクスペリエンスと製品の性能の両方について、最善の方法で考えます。
- タブレット対応のモバイルアプリケーションが必要です。
- タブレット対応のモバイルアプリケーションが既にある場合、エンドポイントに対してマップすることは可能ですか?
- 顧客がどのプラットフォームを使用しているのかを調べる必要もありますが、おそらく2つの主要なプラットフォームは使用することになるでしょう。
- ビジネスプロセスマネジメント(Business process management、BPM)のためのエンジンを、作成または購入する必要があります。
- 管理のシナリオを作成し、これらを顧客と共同設計する必要があります。
- シナリオを理解したら、ビルドしたシナリオまたは購入したシナリオに対してマップします。
- 新しい監視スタックに基づく、通知エンジンが必要になります。
- 予測に役立つトレンド分析機能
- グラフィックスエンジンを使用してビジュアルコンテキストを通知に追加する(開発や製品管理について議論するために、質問を作成または購入する)。
- 当社のITオペレータは、新しい通知システムを使用するために、互換性のあるコンソールが必要になります。
- 既存のシステムに、新しいビジネスプロセスマネジメントのためのエンジンを適用するために、必要となるAPIはありますか?
これらのアイデアは設計とテストの開始後に変わるかもしれませんが、少なくとも利害関係者との議論のために計画を作成してください。
バックログを作成します。「現在の進捗状況を考えて、バックログの未処理の項目に取り組むにはどのような作業をすべきか?」を考えます。これら各点が、大まかに定義していたエピック(Epic)とスプリント(Sprint)の一連の流れにおいて線として繋がるようになるまで、これらの手順を繰り返してください。
計画中には、製品に直接関係のない問題に気づくかもしれません。これらの問題は、チームビルディング、組織の文化、顧客管理など他の戦略的な事項に関連するものです。
例えば、既存のチームがモバイル開発やレスポンシブデザインのシステムに精通していない場合、そのコンピテンシー(高い業績を生むために必要とされる行動特性)を満たすためのトレーニング、採用計画を開始する必要があります。
または、営業、サポート、配信チームに、顧客の新しいユーザーエクスペリエンスについて理解するためのトレーニング資料を渡すこともできます。
最終的には、アイデアを生み出して、デザインのコンセプトを検証するために、リサーチの計画書にも書き込む必要があります。
結論
戦略とは「目的のある意思」です。
IBM、GE、Honeywell、Intuit、CapitalOne、USAAなどの多くの組織は設計プロジェクトのために、組織と経営幹部のコンピテンシーという莫大なリソースを投資しています。
大きな組織になるにつれて、優れた設計プロジェクトのリーダーの需要も高まります。
今日において競争力を維持するためには、設計プロジェクトのリーダーは単にプロセスを実行するだけでは不十分です。彼らは、収益に結びつく明確なビジョンを作り、それを顧客や利害関係者に対して守り、目標達成のために明確な計画を立てる必要があります。
また、ビジョンを生き生きと伝えるには、ストーリーテリングや視覚的なツールを活用してください。そのビジョンを構築するために、チームを柔軟に編成しましょう。
そして、どうしたら全てをビジネスのより大きな目標に結びつけられるかを常に話し合うことを忘れないでください。
[お知らせ]TechAcademyでは初心者でもUI/UXデザインができるようになるUI/UXデザインオンラインブートキャンプを開催しています。現役UI/UXデザイナーのサポートで学びたい場合はご参加ください。