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なぜ社会現象にまでなったのか!ポケモンGOに学ぶARアプリの最適なUXとは

ポケモンGoはリリースからたった2週間で7500万ダウンロードされています。日本だけでなく世界中で社会現象になるほど人気を集めています。なぜこれほどまでに大人気なのか、そしてARアプリとしてUXの長所と短所を詳しく紹介していきます。

テックアカデミーマガジンは受講者数No.1のプログラミングスクール「テックアカデミー」が運営。初心者向けにプロが解説した記事を公開中。現役エンジニアの方はこちらをご覧ください。 ※ アンケートモニター提供元:GMOリサーチ株式会社 調査期間:2021年8月12日~8月16日  調査対象:2020年8月以降にプログラミングスクールを受講した18~80歳の男女1,000名  調査手法:インターネット調査

本稿は、UXPinのブログ記事を了解を得て日本語翻訳し掲載した記事になります。

また本記事は、以前はAT&Tで開発に携わり、現在はUXPinのコンテンツストラテジストであるIndra Sofian氏によって投稿されました。

 

今朝も私はいつものように徒歩で出勤していました。

いつもと違ったことは、店舗の立ち並ぶ通りの歩道、通りのレストランから、街中にある公園の芝生に至るまで、街中がスマートフォンを手に構えた人々で溢れかえっていたことです。

路地や公園の入り口付近には、所々人だかりができていました。というよりも、その人々はコンピュータのアルゴリズムによって、それらの場所に意図的に集められていたのです。

このアルゴリズムこそ、「ポケモンGO」なのです。

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ポケモンは約20年前に登場したゲームで、世界的な流行を巻き起こしました。人々は「ポケモンを見つけてゲットする」というゲームのコンセプトにすっかり魅了されました。また当時はゲームボーイ(GAMEBOY)というゲーム機が、このゲームのプラットフォームでした。

もっとも、それ以降はイテレーションによって初版のゲームに大きな変化が加えられることもなく、ポケモンゲームの熱は年々収束しつつありました。しかし、ポケモンGOとして再登場したことで、何百万人ものポケモンファン、そしてあまりゲームをしない人々までもが、このゲームに夢中になりました。2週間で約7500万のダウンロードを記録したとも推定されています。

 

ただし、ポケモンGOがすべて完璧というわけでもありません。このゲームには数多くのバグがありますし、プレイ方法が分かりにくいというUI(ユーザーインターフェース)の問題もあります。私自身は熟練したゲーマーですが、ポケモンGOでポケモンを捕まえる方法を理解するのに、最初に数分も時間がかかりました。

 

この記事では、一度先入観を外して、ユーザー体験の観点から、ポケモンGOの長所と短所について分析してみたいと思います。

 

目次

 

長所

まず初めに、ポケモンGOの人気の秘密を探ってみましょう。

トレーナーのプロフィール設定

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カスタマイズ機能が優れたゲームは、万人に受けがいいといえます。

ポケモンは、通常のポケモンとポケモンGOの両方の世界を持つゲームです。このような、イマーシブなゲーム(バーチャルリアリティの世界にユーザーを没頭させる効果の高いゲーム)についていえることは、ゲームのプレイヤーが、ゲームの世界でのリアルな体験を求めているということです。ポケモンGOのプレイヤーの場合、ポケモンの世界で冒険をして、ポケモンの旅をよりリアルに体験してみたいと思っているのです。

ユーザーにゲームの世界をより身近に感じてもらう最も簡単な方法は、ユーザー自身がゲームのキャラクターの育成やカスタマイズをできるように設定することです。

 

任天堂はポケモン第二世代で、ユーザーがゲームの主人公を、男主人公または女主人公から選べるような設定にしたときから、すでにこのことに気づいていました。これが良い土台となって、ポケモンGOようなイマーシブなゲームを生み出すことができたのです。

 

ゲームのプレイスタイル

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ポケモンのゲームの面白さの1つは、草むらの中を歩いていて、突然ポケモンと遭遇する瞬間にあります。任天堂は拡張現実(AR:Augmented Reality)のテクノロジーを応用することで、この体験を限りなくリアルに再現しました。

ポケモンGOを開始すると、ほとんど現実のあらゆる場所でポケモンを見つけることができます。このプレイスタイルが、ポケモンが1996年にゲームボーイ(GAMEBOY)機体向けのゲームとして初めてリリースされたときに人々が体験したのと同じ興奮やドキドキ感を、プレイヤーに思い出させるのです。画面上にポケモンが現れると、スマートフォンが振動して、ポケモンを捕まえる「バトル」が始まります。

ポケモンGOが上手く設計されている点は、通常のポケモンゲームと同じく、モンスターボールを1回投げただけでは必ずしもポケモンを捕獲できないようになっていることです。ボールがポケモンに上手く当たらなかったり、ポケモンがボールをかわしたり、何回かボールを投げてもポケモンに逃げられることもあります。

 

「もう少しでポケモンを捕まえらるかもしれない」という期待やスリルが、ゲームを面白くしているのです。その結果、ユーザーをポケモンマスターを目指す旅に夢中にさせ、繋ぎ止めることができます。

私は次に、Nir Eyal氏の提唱するHooked Modelを用いて、ポケモンGOを分析してみました。

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トリガー(Trigger)
1.ユーザーは、退屈をしのげる面白いことを求めている
2.スマートフォンが振動して、画面にポケモンが現れる
アクション(Action)
3.画面上のポケモンをタップする
変化しやすいリワード(Reward)
4.ポケモン
インベストメント(Investment)
5.歩くこと

ソーシャルゲーム

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任天堂とNiantic(ナイアンティック)社は、ポケモンGOをソーシャルゲームとして開発しました。そのため、友人も含めてSNS上の他の人もゲームをプレイする場合に限って、ユーザーはゲームの面白さを体験できるのです。

周りでプレイする人多いほど、より多くのポケモンと遭遇できます。このようにポケモンGOは社会的な拡散性が高い設計になっていて、人口密度やプレイヤーの人数によって、ポケモンの出現率が左右されます。

 

プレイヤーがレベル5に達すると、3つのチームのうちどれかに参加します。その後は、ジム(Gyms)の獲得をめぐって、他のチームとバトルを開始することができます。バトルでの競争が過熱することも、人々がポケモンGOに夢中になる要因だと思います。

さらに、任天堂はポケモンGOのUIに、便利な機能を加えています。多くのゲームプレイヤーには、ゲームの体験を他の人と共有したいというニーズがあります。ポケモンGOのプレイヤーなら、レアなポケモンや何か面白いものを見つけたときに、スクリーンショット画像を保存したいと思うはずです。任天堂は、ポケモンGOのインターフェースにスクリーンキャプチャ用のボタンを追加しているので、プレイヤーはクールな瞬間をはるかに容易に画像として保存できます。

 

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短所

次はポケモンGOのUXの短所について分析してみましょう。

UIのオンボーディング

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ポケモンGOを最初に始める場面から考えてみます。

サーバーとの不安定な接続に悩まされながら、何とかトレーナーのプロフィールを作成した後に、やっとポケモンGOを開始できます。しかしここで、ほとんどゲームのやり方について指示がありません。

もっとも幸いなことに、開始してしばらくすると画面にポケモンが何匹か現れます。しかしここでも、ポケモンを捕まえる方法について、明確な指示はありません。つまり自力で理解するしかないのです。あまりゲームをしない人は、その「アハ体験」に達するまでに、さらに時間がかかるかもしれません。

 

オンボーディングは表面的なレベルにとどまっています。プログレッシブ・ディスクロージャー(progressive disclosure:オンボーディングにおいて、多くの情報から重要なものだけに絞ってユーザーに提示する手法)として、たとえば、次のようなポケモンGOにおける重要なプレイ方法が示されていません。

  • ポケモンを進化させるために博士に送ると、代わりにアメ(candy)をもらえる
  • ラズベリーなどの特定のアイテムは、どのように使えるか?
  • 同種のポケモンをもっと見つけるために、近くのポケモンをタップするにはどうしたらいいか?

このような情報が示されていれば、ユーザーはもっとゲームのインタラクションを楽しめるでしょう。少なくとも、UI上にヒントとなる情報があればいいと思います。

 

サーバーの問題

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一番の短所は、サーバーに問題があることです。ユーザーはアカウントを作成する瞬間から、読み込みに時間がかかったり、クラッシュでゲーム終了となるのを、おそらく何度も体験するでしょう。

ポケモンGOの公開から当初1週間は、多くのユーザーがアカウントの作成すらできない状態でした。何とかアバターを設定できた人たちも、サーバーとの通信のタイムラグが長く、ポケモンの捕獲やバトルの場面でバグやクラッシュも多発したため、ゲームのプレイを諦めざるを得ない状況がほとんどでした。

こうしてポケモンGOのプレイヤーたちが、ユーザーエクスペリエンスに不満をつのらせる状況となっていました。ゲームを開始するのが難しいだけでなく、バグが度々発生することで、ゲームのインタラクションの流れが失われ、体感型のイマーシブなゲームを体験できなくなっていたのです。

 

ゲームそのものや社会現象として見れば、ポケモンGOはとても面白いのですが、それはポケモンGOが正しく作動することが前提となります。

ただ幸いなことに、任天堂とNiantic社はサーバーの問題に対処するために、アップデート版を最近公開しました。タイムラグやクラッシュが大幅に改善されたので、良い方向に進んでいると思われます。

 

機能性

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ポケモンGOのプレイはとても楽しく、ポケモンを捕まえてジムでのバトルを繰り広げながら、世界中を旅することすらできるでしょう。ただそれがこのゲームのすべてです。

ポケモンGOのゲームのメカニクス(仕組み)は、捕獲とバトルの2つにおよそ集約できます。

  • 捕獲できるポケモンの数は250匹が上限です。またゲームを同時にプレイする人の数が減れば、出現するポケモンの数もそれに応じて減ります。
  • バトルは、世界中に存在するジムで行われます。多くのジムは、人口密度の高い地域に特に集中していてます。しかし、人口密度の低い地域ではジムの数の少なくなり、バトルもあまり行われません。結果として、人口密度の低い地域にいるユーザーは孤立してしまいます。

もっとも、ユーザーが最初の熱狂から冷めたときのために、ポケモンGOには「とっておきの秘策」が用意されています。その「とっておきの秘策」とは、プレイヤーに、レベルアップのための単調な操作をさせることです。

 

しかし、ユーザーが基本的なゲームプレイに飽きてしまったときには、ポケモンGOの人気も収束するでしょう。また、季節的に秋と冬が近づいているので、おそらく寒い中で外に出てポケモンGOをプレイする人も減るでしょう。

任天堂とNiantic社は、こうしたユーザーの飽きや季節性の問題に対処するために、将来的には新たな機能を追加する必要が出てくるでしょう。

 

まとめ

最後に、ポケモンGOの事例から学んだことを振り返ってみましょう。

  • オンボーディングは、ユーザーの製品への慣れの度合いに合わせて考えましょう。ポケモンGOの場合には、ゲーム初心者、ゲーム中級者、熟練のゲーマーまで、ユーザーは幅広い層から構成されています。そのため、ゲームのやり方について、より親切で丁寧な指示を提供する方がいいのです。
  • 製品は公開(ローンチ)のときには完璧である必要はありませんが、UXや技術的な点についてマイナス評価が蓄積しないように注意しましょう。フィーチャークリープ(feature creep:ソフトウェアに新機能を追加しすぎて複雑になること)が大きな問題となることはありませんが、大量のバグやサーバーの問題は修正が必要です。
  • 製品の改良に備えましょう。ポケモンGOの人気はまだまだ続きそうですが、拡張現実(AR:Augmented Reality)の目新しさも永遠には続きません。また、ポケモンGOではまだ友達同士でのバトルはできません(過去にヒットした多くのゲームに共通するセールスポイントです)。また、より製品の流通を拡大するためには、任天堂とNiantic社がベンダー(例えばレストラン、コーヒーショップなど)と業務提携契約を結ぶことも可能です。

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