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【事例から学ぶ!】コルク佐渡島氏が語るこれから求められる作家とは!dots. Conference Spring 2016イベントレポート

TechAcademy magazineでは、記事としてdots. Conferenceのイベントレポートを発信していきますので、ぜひご覧ください。この記事は、株式会社コルク 佐渡島 庸平 氏より「作家にエンジニアの力を」というテーマのセッション内容となっています。

テックアカデミーマガジンは受講者数No.1のプログラミングスクール「テックアカデミー」が運営。初心者向けにプロが解説した記事を公開中。現役エンジニアの方はこちらをご覧ください。 ※ アンケートモニター提供元:GMOリサーチ株式会社 調査期間:2021年8月12日~8月16日  調査対象:2020年8月以降にプログラミングスクールを受講した18~80歳の男女1,000名  調査手法:インターネット調査

2/24(水)~3/1(火)の間、イベント&コミュニティスペースdots.にて、dots. Conference Spring 2016が開催されました。

TechAcademy magazineでは、記事としてdots. Conferenceのイベントレポートを発信していきますので、ぜひご覧ください。

この記事は、株式会社コルク 佐渡島 庸平 氏による「作家にエンジニアの力を」というテーマのセッション内容となっています。

 

海外で通用する作家を生むために

講談社を辞めてから、2012年にコルクという会社を作ったのですが、作った背景としては世界基準で活躍する作家を生み出したいと思っていました。

海外では基本作家というのはエージェントに属しているんですが、日本は大体出版社がプロモーションをやっている形になっているんですね。

村上春樹さんは非常に著名な作家だと思うんですが、彼は作品を出版社に預けず、アメリカのエージェントを雇ってうまく海外展開できた成功事例だったりするんですよ。もちろん作品もすごく良いんですけど、プロモーションが圧倒的に上手いんです。

 

作家の立場からすると、ベテランになればなるほど活躍しにくくなっていて、自分で書きたいものはあるんだけれども連載してもらうために雑誌に合わせて書いているという作業がほとんどだったりします。

みんなヒットすることを目指して書いているんですけど、ヒットすればするほどどんどん作らなきゃいけないんですよ。しかも短期間で作らなきゃいけないので、駄作が生まれてしまいファンが離れるという負の連鎖が生まれてしまうんですよね。

これは作家の人生を考える人が必要だなと思いまして、作家エージェント業を立ち上げたんです。

 

 

これからの作家に必要なこと

元々は日本人の作品を海外にという思いで始めたんですが、2011年の10月くらいからKindleという電子書籍が販売され始めて、これからは電子書籍が来るだろうと考えていました。

するとその後、IT業界の人から「編集者に仕事を依頼したい」という問い合わせが殺到したんですよ。

 

全部の依頼は受けなかったんですが、IT業界の人がそういう風に興味を持ってくれているのが面白いと思い、山のように人と会ってIT業界について学んでいきました。

そして、これから作家に必要なのは本を出すことではなく、エンジニアの力を借りてインターネット上にパブリッシュしていくことだなと感じました。

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コンテンツのあり方が変わる

雑誌の中だと作家の想像力を限定して発信します。
インターネットの中であれば、自由に発想しパブリッシュすることができます。

しかし、そのパブリッシュするためのツールがあまり無いという実情がありました。

それまでのSNSは誰でも使えるものばかりで、もっと小さな、作家が使うのに適したサービスがなかったんですね。じゃあ自分たちでその場所を作ろうと「マグネット」というサービスを開発しました。

どんどん電子書籍の売り上げが伸びていて、出版業界は電子書籍によって変わるんじゃないかと考えている人が多いんですが、正直自分はそう思っていません。

ネット上で人気なコンテンツというのは、インターネット的な施策があるから人気を博しているんです。

そういう意味でYouTubeは、テレビにある動画の場所を移しただけに過ぎないので、成長に限界があると感じています。

電子書籍も全く一緒で、インターネット上にデジタル化したものを放り出しているだけ、場所を移しただけで、本として在り方は以前と変わっていません。

普通、作るコンテンツというのはデバイスによって変わるものなんですよ。

巻物から書物になったときに載せるコンテンツが変わったように、書物から電子書籍に変わる時はコンテンツも変わるべきなんです。

でも今のところインターネット的な新しいものが入ってきていないなと感じますね。

 

ECを通して作品上の体験を販売している

作家のコンテンツが多くなってきたので、ECを始めました。

ある時、「宇宙兄弟」の物語に出てくるヘアピンを販売したんですが、1週間で1500人くらいに買ってもらえたんですね。

「単なるヘアピンが」と思って驚いていたんですけど、ある購入者の方からメッセージをいただきまして。

「今日は特別な日なので、ヘアピンをつけます!」と言ってもらえたんですね。

このヘアピンは、作品中でキャラクターがピシッとする時に付けていたもので、購入者はピシッとするきっかけをくれるものだと思って買ってくれているんですね。

そういう人からするともはや、このヘアピンは単なるヘアピンではなくなっているわけです。

購入者によっていろいろ思いはあると思いますが、そういった感情を思い出すために買ってもらったんだなって気付きましたね。

 

作家の役割はいろんな人の感情を揺さぶること

明治時代には言語というものが一部のエリートにしか使いこなせなかったから、それを使いこなせる人が思想を伝えられたんですよ。だから小説が世の中を変えるものとなっていたんです。

今の時代で考えるとその役割はエンジニアだと思っていて、プログラム言語を通して何かを伝えられるんじゃないかと思っています。

出版社時代なんですが、無くてもいいものを無くてはならないと思ってもらうためには、どうしたら良いのだろうかということをずっと考えていました。

今後AIなどによって便利な世の中になる中で、心が動かされるものが無くてはならないと感じています。

そしてその心が動かされるものは、作家とエンジニアが近くにいて、一緒に作っていくということで生まれるんじゃないかと思いますね。

 

会場からの質問

また、会場からの質問にもお答えしていただいています。

Q. インターネット化が進む上で、リアルな書店は今後どう変わっていくとお考えですか?

縮小しているとはいえ、まだ14,000店舗世の中には存在しています。

ネット上ではフォローしていないと情報が入ってこないんですけど、リアルであれば潜在的な人にもアプローチできるので、まだまだ影響力は失われていないと思います。

 

以上、佐渡島 庸平 氏による「作家にエンジニアの力を」のトークセッションでした。

今後ますますインターネット化が進む中でどういった変化が生まれるのか、興味深いセッションになったのではないでしょうか。