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「お菓子を通したストーリーを提供しているから、全てにこだわる」株式会社BAKEのデザインにかける想い|株式会社BAKE井手口氏・福田氏

「BAKE CHEESE TART」や「クロッカンシュー ザクザク」で有名な製菓企業株式会社BAKEのグラフィックデザイナーの井手口さん、採用マネージャーの福田さんにお話をお伺いしました。

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井手口 直也|BAKE Inc.にてグラフィックデザイン担当。FICC Inc.、BALCOLONY.を経て現職。

福田 映理|新卒でグッチグループジャパンへ入社し店舗勤務を経験、その後お菓子業界へ転職し人事業務に従事。(クリスピー・クリーム・ジャパン→ジャパンフリトレー)2016年の12月から現職。

 

大学時代に出会った本に衝撃を受けて、デザイナーの道へ。

ーー井手口さんがデザインを始めたきかっけはを教えていただけますか。

井手口:大学時代にIDEOというデザインファームの本を読んで、衝撃を受けたのがきっかけです。その本には、クライアントの「売上げを上げたい」という課題に対し、ビジュアルを良くして売上げを上げることだけが効果的な解決方法ではない、本質的欲求に対してユーザーに行動を促すこともデザインだ……という内容が書かれていたんです。

 

ーー大学ではデザインの勉強をされていらっしゃったのでしょうか。

井手口:いえ、大学ではマーケティングやプログラミングを専攻していました。恥ずかしい話ですが、本当にデザインは未知の領域で、当時はデザイナーを「絵がかける人」と思っていたほどです。グラフィックデザインを学んだのは、大学卒業後に専門学校に通ってからです。

井手口 直也氏(株式会社BAKE グラフィックデザイナー)

 

制作会社から、製菓企業である株式会社BAKEへ転職。

ーー株式会社BAKE(以下 BAKE)の前には、制作会社に在籍されていたと伺いました。どのようなお仕事をされていましたか。

井手口:前職ではグラフィックやウェブを担当していました。クライアントの業種が幅広く、色々なデザインを担当させてもらい本当に勉強になりました。5年がたって、経験を重ねるうちに一つのことを深掘りしてデザインしてみたいという気持ちが強くなってきて。ちょうどインハウスのデザイナーに興味を持ち始めた頃ですね。

 

ーーBAKEのことは、どのようにして知ったのでしょうか。

BAKEを最初に知ったのは、THE BAKE MAGAZINE(株式会社BAKEのオウンドメディア)編集長の塩谷さんのTwitter(@ciotan)。”しおたん”と呼ばれているのですが、ライターや編集者として活躍していて、実は大学生の頃からSNSをフォローしていたんです。

彼女のような熱量の高い方が自社メディアの編集長をしていると知り、「BAKEってどんな会社なんだ?」と気になって。それがBAKEを知ったきっかけです。

 

ーーデザイン制作会社から、製菓企業であるBAKEへの転向をよく決心されましたね。

BAKEを知ってすぐ、訪問のアポをとりました。面談では、デザイナーや人事、現会長の長沼とも話して、彼らのお菓子への思い、素直さ、情熱…全てがストレートに伝わってきたんですよ。一度会って話しただけで、自分でも驚くほど惹かれていました。「日本を代表する製菓会社になりたいのでチャレンジしていきたい、一緒に頑張ってくれないか」という言葉に心打たれて入社を決めました。

 

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自信を持ってブランドを伝えられるように、細部のデザインの手を抜かない。

ーーご入社されてからは、どのような仕事をど担当されていらっしゃいますか。

井手口:最初はグラフィック兼ウェブ担当として入社し、「BAKE CHEESE TART」や「クロッカンシュー ザクザク」のキャンペーンサイトの制作などを行っていました。ただ、僕自身グラフィックに専念したい気持ちが強かったんです。転機になったのは、北海道にある自社工場の内装のデザインでした。昨年完成したのですが、工場の内装のデザインを行なったことをきっかけに、各ブランドのグラフィックの仕事が増えてきたんです。

Bake inc “BAKE” FACTORY from Bake inc. on Vimeo.

 

ーーお客様が目にすることのない工場までも、社内のデザイナーさんがデザインするのは面白いですね。

井手口:確かに、珍しいかもしれませんね!他にも、工場から店舗へ半製品を運ぶ段ボールも、デザインしています。

こういったものは、お客様が目にする機会はないかもしれません。ですが、工場やお店のスタッフが自分たちのブランドに誇りを持もてるようにブランドに関連するものは全て自社でデザインするようにしています。また、ぱっと見ても分からない細部にも絶対に手を抜かないのが暗黙の了解です。

 

ーー暗黙の了解というのは、すごいですね。言葉にしなくても当たり前になっている理由はどうしてだと思いますか。

井手口:「お菓子を進化させる」という会社の方針があるのですが、みんなそれを強く意識しています。お菓子をおいしくするのは当たり前で、お菓子を届ける全てのものに本気で取り組んでいます。お菓子を進化させるために、自分たちができることをやり抜く。それが、BAKEらしさなんじゃないか、と思いますね。

 

シズル感に頼るだけのデザインはしない。

ーーデザインをする上で、気をつけていらしゃることはありますか。

井手口:シズル感に頼るだけの表現方法を取らないようにしています。飲食関係のデザインは、シズル感を出しておいしく見せる方が良いとされています。例えば、この箱にドーンとチーズタルトが描かれていれば、わかりやすく美味しそう!と感じられるかもしれません。けれど私たちはインハウスだからこそ、つくり手の姿勢や、お菓子への本気感も汲み取って、表現することができると思うんです。

BAKE社内では「いかに本質を表現できているか」をよく話し合っています。社内では「フックがある」と言っているのですが、突き詰めて突き詰めて、独特の表現にたどり着くことを目指しています。

 

ーーその感覚が統一できているのですね。箱を開けるときはとてもわくわくしました。開けた後も、この紙がチーズタルトの形と相まってレースみたいで可愛かったです。

井手口:グラシン(タルトの下部分包んでいる紙)も全てオリジナルでつくっています。コストはかかりますが、チーズタルトとの高さやサイズ感にこだわっていて、食べる瞬間までいかにわくわくしてもらえるかを考えています。

 

Webサイトは情報の見やすさを大事に。アニメーションで五感を表現。

ーーWebという平面の世界において、五感で菓子へのわくわくを表現するために意識をしていることはありますか。

井手口:Webは情報を伝えるメディアなので、構造はシンプルにわかりやすくしています。力を入れているのはアニメーションで、香りや手触り、食感などを表現しています。

 

ーー「BAKE CHEESE TART」のブランドデザインをご担当されていて、どういうところにやりがいを感じますか。

井手口:BAKEのクリエイティブチームでは1ブランドにつき1人が担当しているので、オーナーシップをもって、やりたいことを実現できる環境にやりがいを感じています。あとは、つい先日のことですが、街で「BAKE CHEESE TART」の2016年の夏季限定の紙袋を持っている方を見かけて。今まで大事に持っていてくれたのかな、と嬉しい気持ちになりましたね。(取材時2017年11月)

 

ーーどのようなことを提案をされているのでしょうか。

井手口:例えば、このホリデーのパッケージは普段のパッケージに雪化粧をまとったようなデザインにしたくて、シルバーで印刷しています。そのため、角度や光の当て方で表情が変わります。シルバーで作りたいと言ったら印刷工場の方に「普通、箱の印刷にシルバーなんて使わないよ」と驚かれました。グレー印刷ではうまく表現できず何度も試作を重ねました。試行錯誤のなか悩んでいたとき、やったことのない手法でも、社内のメンバーは背中をおしてくれました。それがとても心強かったですね。

自分の思い込みで表現の可能性を狭めることはしない。

ーーデザインをする上で、自分ルールはありますか。

井手口:表現へのアプローチや方法論を目的によって変えることです。表現にはいろんな可能性がありますが、自分の成功体験や思い込みで狭めてしまうようなことってありませんか?自分の場合、できるだけたくさんの案を作って人に見せてフィードバックをもらうようにしています。フィードバックを全て鵜呑みにするのではなく、自分が意図した通りに表現できていたのかも確認しています。

 

ーーデザイン案を作成するときなのですが、「BAKE CHEESE TART」のデザインをする際にペルソナの設定はされていらっしゃるのでしょうか。

井手口:「BAKE CHEESE TART」にとって自由が丘店は象徴的な存在なので、自由が丘店にいらっしゃる方をイメージしていることは多いですね。お菓子だからといって、可愛らしさだけにはしないし、かっこいいだけにもしない、そのいい塩梅が自由が丘にあると思っています。

 

お菓子を通したストーリーを提供しているから、全てにこだわる。

福田 映理氏(株式会社BAKE 採用チームマネージャー)


ーーインハウスでデザイナーさんが多くいらっしゃるとのことでしたが、組織としてのこだわりがあるのでしょうか。

福田:食品業界ではデザインや包材はコストダウンの的になりやすいものです。

しかしBAKEでは商品と同じくらいデザインを重要視しています。創業者である長沼(現在は会長)や、社長の西尾もよく言っているのですが、非効率への投資、つまりデザインへの投資はBAKEの強みになっています。だからこそ、インハウスのデザイナーたちがこうやって活躍してくれているのかな、と。

 

ーーそこまで、デザインを重要視する理由はどうしてでしょうか。

福田:お客様体験はお菓子を食べるだけでなく、お店にいらっしゃったり、持ち帰って家族と食べたり、友人に贈ったり、全て繋がっているストーリーです。私たちはそのストーリーを提供しているので、どこかで手を抜くことはできません。ストアデザイン、ユニフォーム、冷蔵庫、段ボール、店舗内のゴミ箱に至るまでのデザインをオリジナルで考えています。お客様にそれぞれのブランドの世界感ごと持って帰ってもらうことが、私たちがお菓子を通して提供していることなんです。

井手口:僕たちはお菓子を通した全ての体験を大事にすることを常に意識しています。

 

ーーユニフォームも井手口さんが担当されていらっしゃるのでしょうか。

井手口:はい。「BAKE CHEESE TART」のユニフォームは、一枚として同じのはないように設計しているんです。スタッフ一人ひとりが個としてのサービスを提供してほしいという思いを込めて、画一的なデザインではなく一つずつ違うものにしました。

福田:自分だけのデザインで、着る人もわくわくしますよね。ユニフォームも素敵だと思えるものを身に付けることで、自信をもって「BAKE CHEESE TART」の世界感が表現できると思います。

私はBAKEに入社前からコーポレートの仕事を担当しているのですが、今までデザインという領域は遠い存在でした。けれど、BAKEでは新商品や新ブランドがローンチされる時に、全社会議でグラフィックデザイナーからブランドのデザインストーリーをプレゼンします。全社員がブランドや商品、デザインの背景を共有できる機会があります。話を聞いて、私自身デザインへの意識も高まるようになりました。また、背景を知ると自社のブランドへの誇りにも繋がると思っています。こうした動きができるのは、うちの会社の強みだと思います。

 

ーーBAKEさんでは、どのような方が活躍されていますか。また、どんな方と一緒に働きたいですか。

井手口:趣味でも何でもいいのですが、こだわりを持っていることは大事だと思っています。僕たちは、お客様に商品を届けて好きになってもらうということが重要です。こだわりが強い人ほど、ブランドやものの良さを強く表現できると思っています。

 

ーー福田さんはいかがでしょうか。

福田:自ら何かを生み出すことが好きは人にとって、刺激のある環境だと思います。今5年目で(2018年2月9日時点)、これまで国内外73店舗(2018年2月9日時点)以上と急拡大してきたので、会社として足りないところもまだまだあります。今は第二創業として基盤を構築しているところなので、自ら率先して会社を作っていける人がいいと思っています。あとは、純粋お菓子が好きなは人はすごく楽しい、これはお約束します。

 

インタビュアー:新嘉喜りん(キラメックス株式会社 広報)