プログラミングは“思い”をかたちにするツール——漢方デスク株式会社 代表取締役 葉山茂一氏 【Why Programming!】
なぜプログラミングが必要なのか?をWebサービス最前線で活躍するゲストに聞く企画「Why Programming!」。漢方・薬膳の総合ポータルサイト「漢方デスク」を運営する漢方デスク株式会社 代表取締役社長の葉山茂一氏にお話を伺いました。
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なぜプログラミングが必要なのか?をWebサービス最前線で活躍するゲストに聞く企画「Why Programming!」。第2弾は、漢方・薬膳の総合ポータルサイト「漢方デスク」を運営する漢方デスク株式会社 代表取締役社長の葉山茂一氏にお話を伺いました。
「漢方デスク」は、2013年11月に葉山さんが1人でスタートさせたWebサービスです。2013年1月のリリース以来、現在では30代~40代の女性をメインユーザーに月間10万UU、50万PVを誇ります。
プログラミングからデザインまで、「漢方デスク」のすべてをたった2ヵ月で作り上げた葉山さんですが、実はプログラミングに関してはまったくの素人だったといいます。短期間でどのようにして技術を習得したのでしょうか。
ゲスト
ゲスト:葉山茂一氏(漢方デスク株式会社代表取締役社長)
1983年生まれ、東京都世田谷区出身。東京大学文学部を卒業後、マッキンゼーで3年、アマゾンジャパンで3年半勤めたのち独立。漢方に関する事業設立を目標に、2012年11月にクックパッドに入社。2013年11月に分社化し、現在は渋谷に拠点を構える。
漢方のIT化で社会にインパクトを
ーーそもそも、なぜ漢方のサービスを作ろうと思ったのですか?
大学卒業後はマッキンゼーでコンサルティング業、アマゾンでバイヤーとして働いたんですが、当時はちょうど社会起業家の走りが出始めた頃で、自分も何か社会的にインパクトのあることをしたいと考えていました。そこで思い切って会社を辞め、友人と一緒にヘルスケア系のコンサル会社を立ち上げたんです。
そのなかで、漢方専門医である慶応義塾大学の渡辺賢治教授とお会いする機会があり、お話を伺ううちに意気投合したんですよ。「これからの時代は漢方だ!」という感じですね(笑)。
ーー具体的に漢方のどのようなところに感銘を受けられたのでしょうか?
“未病を防ぐ”という思想が時代に即していると思いました。未病とは、病気とまでは言わないけれど、健康でもない状態のことを指します。
基本的に、日本では病気になってからでないと医者にかかったりしませんよね。でも、これからどんどん医療費も上がっていきますし、その度に最先端医療を受けていたのでは身がもちません。病気を未然に防ぎ、自分自身をコントロールして健康を勝ち取る漢方の考え方を、新しい価値として提供できたらすごいインパクトだと思いました。
そこで、友人とは一旦別れ、漢方関連のサービスを作ることにしたんです。Webサービスでの展開を選んだのは、これもやはり時代に即してるなと。
クックパッド入社からのスピードリリース
ーー漢方のIT化というわけですね。マニアック、且つ、おひとりで始めるには規模の大きな事業だと思うのですが、Webの知識が乏しいなかでどのように進められたんですか?
僕もひとりでは厳しいかなと思い、まず国に提案して協力を仰いだんです。でも、結局頓挫してしまって……。それならと、今度は料理レシピサイトの総本山であるクックパッドに、薬膳の切り口から営業に飛び込みました。すると、「Webサービスをしっかり作ってみたいならうちでやりなよ」とお声掛けいただき、独立前提で入社することになったんです。
ーーおもしろい展開ですね。クックパッドはなんと言いますか……ちょっと物好きですね
そうですね。あちらにとっては、「漢方! 薬膳!」と叫んでいる変な兄ちゃんが来たなという認識でしたでしょうから、今思うと、本当に懐の深い会社ですよね(笑)。
ーープログラミングに関しては素人だったそうですが、入社からリリースまではたった2ヵ月とのこと。どのように技術を学ばれたのでしょうか?
まず、環境によるところが大きかったと思います。僕の隣の席に、社内で技術部長などを歴任されてきた方がいたんです。HTMLですら怪しいところからWebサービスを立ち上げようというんですから、当然途中で何度も止まってしまうわけです。その度に彼を捕まえては、頼み込んで聞いていましたね。
たとえば、自分ひとりだったら2時間かかる問題も、その道のプロに聞くと2分で解決するんです! これは本当に有り難かったですね。今でもとても感謝しています。
必要な技術を必要なとき、必要なだけ学ぶ
ーー初心者がプログラミングを学ぶ上で大切なことは、ほかにどんなものがありますか?
自分の思いをかたちにしたいという意志です。基本的に、ほとんど経験のないところからプログラミングを始めようという人は、専門的なエンジニアではなく、ディレクションを含めたプロデューサーになろうという人だと思うんですよ。こんなサービスがあったらいいな、素敵だなというものを実現させることに情熱を燃やしている人。だから、プログラミングを学ぶときに意識すべきは、思いをかたちにするためにどう活用するかということなんですね。
ーープログラミング自体を目標ではなく、目標実現のための手段のひとつとして捉えるということですね
実は僕、ちょうどインターネットが日本で普及し始めた中学生の頃からWebに興味は持っていたんです。でも、張り切ってブライアン・カーニハンの「プログラミング言語C」や、Visual Studioまで買って勉強したんですが、全然理解できずにすぐに投げ出してしまいました。その後、大学でも教養でJavaの授業をとったりしましたが、相変わらずでしたね。そういうわけで、結局自分には向いてないんだなあとコンプレックスにさえ思っていたんです。それが今ではWebサービスを丸々ひとつ完成させたんですからわからないものですね。
ーー挫折した過去のケースと今回とで違うのは、「漢方デスク」を作るという明確な目標があったことですね
やりたいことが明確なら、何かを学ぶことは実はとてもやりやすいんですよ。プログラミングと一言で言ってもものすごく広い世界なので、データベースも学んで、フロントエンドも学んで、アプリケーションも……とすべてを0から100まで覚えようと思ったら1年や2年では足りません。
すべては学べないと割り切って、目標に最短距離で届くために必要なものを少しずつ取り入れていったほうがいいと思います。そして足りないものが出てきたら補って……という具合に、ずっとそのループでやっていくんだと思いますよ。
ーー実践のなかからその都度学ぶということですね。そのほうがモチベーションも維持できそうです
そうですね。最初は一日でほんの少し動くようになる程度の一歩でいいと思うんです。それをどんどん積み上げていけば、しまいには素敵なWebサービスが作れるようになるんじゃないでしょうか。
ちなみに、僕は漢方についても素人でしたが、常備薬を並べた“リアル漢方デスク”なるものを設置し、クックパッドの女性社員の健康相談を受けているうちにこちらも詳しくなりました。今では相手の顔色を見ればだいたいのことはわかります(笑)。何でも実践あるのみです!
目指すは、Web業界の山下達郎!?
ーー今後の「漢方デスク」の進展を教えてください
まずはアプリ化を考えています。今は症状のタイプ診断や専門家の記事掲載などにとどまっていますが、今後は、ユーザー1人ひとりの健康状態を時系列で追えるような仕組み作りをしていきたいと思っています。
ーーそれは楽しみですね! プログラミングは葉山さんがそのまま続けていかれるんですか?
さすがにひとりでは荷が重いので、専任のエンジニアを入れ加速化させる予定です。でも、自分でもコードは書いていこうと思ってますよ。目指すは山下達郎です!
ーー? 山下達郎というと、あの歌手の?
はい。彼はライブ演出や曲作りからもわかるように超一流のプロデューサーなんです。でも、実はギターのカッティングもプロが目を見張るほどの腕前なんですよ。僕も同じように、Webサービスのプロデューサーとしても一流ですけど、葉山さんの書くコードにはキラリと光るものがあると言われたいんです!
ーーなるほど。目指すはWeb業界の山下達郎というわけですね!
インタビューは以上です。
熱い情熱を傾けられる目標があれば、どんなに難しいプログラミングにも立ち向かえそうです。